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辞書を読んでいくストイックなブログです。

アメリカ英語とイギリス英語の対照

Comparison of American and British English - Wikipedia(2017年8月18日段階)より。こちらは初学者向けではない箇所もあるので、ご注意を。

 

英語はイギリスの植民地政策によってアメリカにもたらされました。16世紀末から17世紀初めにかけてのことです。同様に、大英帝国の貿易や植民地政策の結果、英語は全世界に広がり、1921年には4.7~5.7億人に広まり、当時の人口の4分の1が話していたとされています。

400年が経ち、アメリカ(特にアメリカ合衆国)で使われている言語の形はイギリスのものと少し違ってきました。それが、今ではアメリカ英語とイギリス英語と言われることもあります。両者の違いは発音、文法、単語(語彙)、綴り、句読点、イディオム、日付や数字の書き方などに現れます。ただ、これらの違いは相互理解ができないほどではありません。ただ、一部の単語は全く違う意味になっていたり、片方の話者は知らなかったり、使われなかったりします。この違いを形作った人として、アメリカで最初の辞書(1928年出版)を作ったNoah Websteが挙げられます。彼はアメリカの人が方言のように、イギリスとは違った英語を話すことを示しました。

このアメリカ英語とイギリス英語の間の多様性は面白いコメントでも表現されています。例えばバーナード・ショウは品位のある人でしたが、いわくアメリカとイギリスは"two countries divided by a common language"「一つの共通語で分けられた二つの国だ」と。オスカー・ワイルドは"We have really everything in common with America nowadays, except, of course, the language"「私たちは今日のアメリカではすべてを持っている、ただし、もちろん、言語以外をね」(The Canterville Ghost, 1888)と。ヘンリー・スイートは1877年に誤った予言をしました。すなわち、1世紀以内にアメリカ英語、オーストラリア英語、イギリス英語は相互理解不可能になるだろう、というものです(A Handbook of Phonetics)。おそらくこれはラジオ、テレビ、インターネット、グローバリゼーションといった世界的なコミュニケーションの増加に伴い、地域的な差が減ったことによるものでしょう。この結果、または「正しい英語」の学習熱に伴い、いくつかの変種も消えました(例えばwirelessはradioにとってかわられました)。

会話ではアメリカ英語とイギリス英語ではほとんど相互理解可能ですが、時によっては違いがあり、時々恥ずかしい間違いも起こります。例えばアメリカ英語ではrubberは消しゴムではなくコンドームを指します。またイギリス英語でfannyは女性器を、アメリカでは肛門(アメリカ英語ではass 、イギリス英語ではarse)を指します。.

単語の由来と組み合わせ

方向を表す接尾辞である-ward(s):イギリス英語のforwards, towards, rightwardsなど、アメリカ英語のforward, toward, rightwardなど。アメリカ英語ではafterwards, towards, backwardsは一般的ではないですが、イギリス英語ではforwardは一般的です。また、句ではlook forward toのように使われます。-sつきの語は副詞(または前置詞towards)として使われます。ただ、形容詞としてはまれで、イギリス英語でも"an upward motion"とアメリカ英語と同じ言い方をします。1897年の『The Oxford English Dictionary』は-wardsの方が-wardよりも意味が定まっている度合いが強い、という意味の違いを記しています。

アメリカ英語は副詞や複数形を表す際、day, night, evening, weekend, Mondayなどに自由にsをつけます。I used to stay out evenings.「私は夜毎に外に出る。」the library is closed Saturdays.「図書館は毎週土曜日に閉館する。」この用法は古英語から来ていますが、今ではアメリカ英語の用法とみなされています。(たとえばthe OEDにはイギリス英語ではto sleep nightsとは言わないがto work nightsと書かれています。)

イギリス英語では動作主を表す接尾辞-erはfootball(またcricketやnetball、ときどきbasketballやvolleyball)にもつきます。アメリカ英語ではfootball playerといいます。動詞として使うことができるスポーツの名前では、どちらでもerをつけることができます。例えばgolfer、bowler、shooterなどです。アメリカ英語ではときどき、バスケットボール選手のスラングとしてballerが使われます。しかしballという動詞は野球をすることを意味します。

ときどき、語の組み合わせが新語を作ることもあります。health careはアメリカでもイギリスでもhealthcareとなっています。アメリカ英語ではこういう例がよくありますが、イギリス英語では組み合わせの形で書かれるものが多いです。

動詞+名詞の組み合わせの場合、アメリカ英語では不定形を使いますが、イギリス英語では動名詞が好まれます。たとえば(米、英の順)jump rope/skipping rope、racecar/racing car、rowboat/rowing boat、sailboat/sailing boat、file cabinet/filing cabinet、dial tone/dialling tone、drainboard/draining boardなど。

一般的にアメリカ英語は屈折の接尾辞を落としがちです。例えばcookbook/cookery book、Smith, age 40/Smith, aged 40、skim milk/skimmed milk、dollhouse/dolls' house、barber shop/barber's shopなど。

単数形と複数形でも違いが出ます。たとえばthe UK has a drugs problemですがthe United States has a drug problemになります(イギリスでは単数形の用法が一般的にもかかわらず)。またAmericans read the sports section of a newspaperですがthe British are more likely to read the sport sectionとなります。しかし、イギリス英語のmathsはアメリカ英語では単数形のmathです。

いくつかのイギリス英語でフランス語源のものはアメリカ英語ではほかの言語から借用されています。例えばアメリカ英語のeggplant、zucchiniは、イギリス英語ではそれぞれaubergine、courgetteです。

単語

語彙の違いについて

メディアがイギリス英語とアメリカ英語の話者たちに互いの言語への理解を深めたにもかかわらず、いまだに多くの単語は片一方の言語のものだとみなされます。イギリス英語はアメリカ英語の話者にも理解可能(逆もまたしかり)なのですが、それらは借用語のように思われています。

イギリス英語由来の言葉

アメリカ英語話者にとってはイギリス英語のいくつかの言葉は気を使うようです。なぜならば、アメリカ英語とイギリス英語、どちらの用法を使っているのかわからなくなるからです(例、ビスケットとクッキー)。運転免許証(driving licence、アメリカ英語ではdriver's licence)のような単語なら簡単に理解されます。ただ、naff(よくはない、という意味のスラング)アメリカ英語では使われません。

アメリカ英語由来の言葉

ほとんどのイギリス英語話者はアメリカ英語が理解できます。例えば"sidewalk"(歩道、イギリス英語ではpavement)、"gas"(ガソリン、イギリス英語ではgasoline/petrol)、"counterclockwise"(反時計回り、イギリス英語ではanticlockwise)や"elevator"(エレベーター、イギリス英語ではlift)。いくつかの単語は理解されないのものあります。たとえば"copacetic"(素晴らしい)はイギリス英語話者には理解されません。

相違

違う意味を持つ言葉

billやbiscuitといった単語はアメリカ英語とイギリス英語では違った意味で用いられます。アメリカ英語ではbillは紙幣("dollar bill"、ドル紙幣)として用いられます。イギリス英語では請求書になります("the repair bill was £250"、修理費の請求書は250ポンドだった)。アメリカ英語ではbiscuit(フランス語の「二度焼いた」(biscotto)から)はイギリス英語ではsconeと呼ばれ、アメリカ英語のビスケットはcookieオランダ語の「小さなケーキ」から)と呼ばれます。イギリス英語では"to table an item on an agenda"は「議論のために公にする」という意味ですがアメリカ英語では「議題から外す」という意味になります。

"football"はイギリス英語ではサッカーを、アメリカ英語ではアメフトを意味します。アメリカ英語で"soccer"はイギリスから来た言葉とみなされています。ただ、国際的(アメリカ以外)には"football"はサッカーを意味します。

同様に"hockey"もイギリス英語では陸上競技を、アメリカ英語ではアイスホッケーを意味します。

その他のあいまいさ

まったく違う意味になる単語は少ないです。ほとんどは(1)いくつかの意味がある単語で一部が違う場合(例、bathroomとtoilet)または(2)アメリカ英語とイギリス英語で同じ意味ではあるものの、使用頻度に差があるもの(例、smart, clever, mad)のいずれかです。

使用法や意味の違いはときどき混乱や恥ずかしい失敗を招きます。例えばfannyはイギリス英語では女性器のスラングですが、アメリカ英語ではお尻のスラングです。アメリカ英語のfanny pack(腰につけるパック)はイギリス英語ではbum bagになります。アメリカ英語ではpissedはイライラさせられる、という意味になりますがイギリス英語では酔っぱらった、の粗い言い方になります。(どちらでもpissed offはイライラさせられた、という意味になります。)

同様にアメリカ英語のpantsはイギリス英語のtrousers、knickersはhalf-length trousers を意味します(アメリカ英語では大体"shorts"が使われますが)。一方、イギリス英語では多くの日とはpantsと聞くと下着を、knickersと聞くと女性の下着を連想します。

ときどき、混乱はもっと微妙になります。アメリカ英語ではquiteは強調語として使われます。例えば、"I'm quite hungry"は"I'm very hungry"(私はとてもおなかがすいている)を意味します。イギリス英語のquite(特に会話では)は"quite right"(とても正しい)または"quite mad"(とてもいい)を意味しますが、一般的には"somewhat"(いくらか)を意味します。そのためイギリス英語で"I'm quite hungry"は"I'm somewhat hungry"(私はいくらかおなかがすいている)になります。こうした違いは誤解のもとになります。

頻度

イギリスではwhilstは接続詞(whileと同じ)として受け入れられています。-stで終わる接続詞はアメリカ英語よりイギリス英語でよく見られます。

イギリスでは秋を意味する"autumn"は時代遅れとされています。一方、アメリカではよく使われます。

イギリスでは終止符(full stop)をperiodとは言いません。一方、アメリカ英語では句点以外ではほとんど使われません。例えば、トニー・ブレアは"Terrorism is wrong, full stop"(テロリズムは悪だ、以上)といいましたが、アメリカ英語では"Terrorism is wrong, period."となります。

お休みの挨拶

アメリカ人はいつでも"Happy holidays"といいます。冬休み(クリスマスなど)でも、宗教を気にせずに使われます。一方、イギリスでは"holiday season"や"holiday period"はみんなが休みを取る夏に使われます。アメリカ英語ではそういう意味では使われません。.

特殊な違い

言葉の綾

イギリス英語でもアメリカ英語でも"I couldn't care less"は話者が気にしないことを表します。多くのアメリカ人は同じ意味で"I could care less"といいます。ただ、この言い方は馬鹿にされます。

ただ、どちらでも"I don't mind"は"I'm not annoyed"(気に障っていませんよ(例えば誰かがタバコを吸っているとき)を意味します。一方"I don't care"はしばしば"The matter is trivial or boring"(些末またはつまらないこと)を意味します。しかしながら、"Tea or coffee?"という質問に答える場合、どちらでもいい時はアメリカ人は"I don't care"と答えますが、イギリス人は"I don't mind"と答えます。どちらももう一方には奇妙に響きます。

同じ意味のイディオム

いくつかのイディオムはアメリカ英語とイギリス英語で同じ意味を持ちますが、使われる単語が違います。例えば以下の通りです。

 

イギリス英語 アメリカ英語 意味
not touch something with a bargepole not touch something with a ten-foot pole 絶対触りたくない
sweep under the carpet sweep under the rug うやむやにする
touch wood knock on wood 厄除けのおまじないをする
see the wood for the trees see the forest for the trees 森を見て木を見ず
put a spanner in the works throw a (monkey) wrench (into a situation) 計画を妨害する
put (またはstick) your oar in
but it won't make a ha'porth of difference
to put your two penn'orth (またはtuppence worth) in
to put your two cents (またはtwo cents' worth) in あなたが意見を言う
keleton in the cupboard skeleton in the closet 内輪の話
a home from home a home away from home 第二の故郷
blow one's own trumpet blow (またはtoot) one's own horn クラクションを鳴らす
a drop in the ocean a drop in the bucket a spit in the ocean わずかの量
flogging a dead horse beating a dead horse 無駄
haven't (got) a clue don't have a clue or have no clue(イギリス英語でもOK) 見当がつかない
couldn't care less could care less or couldn't care less 気にしない
a new lease of life a new lease on life 寿命
lie of the land lay of the land 状況
take it with a pinch of salt take it with a grain of salt 話半分に聞く
a storm in a teacup a tempest in a teapot 空騒ぎ

スタイル

thatとwhichの制限用法と非制限用法

Further information: English relative clauses § Restrictive or non-restrictive relative clauses

一般的に非制限用法では情報は保管されるものです。すなわち、文章のほかの箇所の意味は変わりません。一方、制限用法では情報は文章の意味にとって不可欠なもので、修飾される名詞に関係節で意味をつけます。制限用法の例は"The dog that bit the man was brown."(人を噛んだ犬は茶色です)。非制限用法の例は"The dog, which bit the man, was brown."(人を噛む動物である犬は茶色でした)。前者の"that bit the man"は今話題になっている犬について述べていますが、後者の"which bit the man"は犬についての一般的な情報を追加しています。普遍的なルールではありませんが、非制限用法はコンマで区切られ、制限用法は区切られません。会話ではイントネーションで違いを出します。物書きはwhichを非制限用法に、thatを制限用法に使います。

2015年版のFowler's Dictionary of Modern English Usageでは、アメリカ英語ではwhichは制限用法で用いられず、thatのみが制限用法に用いられるとしている一方、イギリス英語ではthat、whichともに制限用法で用いられますが、イギリス人はthatを好んで使うとしています。

書き方

カッコ

イギリス英語では"( )"はbracketsと、"[ ]"はsquare bracketsと、"{ }"はcurly bracketsと呼ばれます。正式なイギリス英語とアメリカ英語では"( )"はparentheses(単数形はparenthesis)と、"[ ]"はbracketsまたはsquare bracketsと、"{ }"はcurly bracketsまたはcurly bracesと呼ばれます。文章がカッコ内で終わらない限り、どちらとも句読点はカッコの外に出します。

"I am going to the store (if it is still open)."
(This page is intentionally blank.)

文章が終わっている場合、とくにピリオド以外で終わる場合はカッコの中に入れます。

"I am going to the store (Is it still open?)"
"I am going to the store (I hope it's still open!)"

 

 

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