コンマの有無で数億円の残業代が発生?
ニューヨーク・タイムズの記事でオックスフォードコンマの有無が数億円の残業代の支払いをもたらしたと報じました。
問題となったのはメーン州の州法です。条文では以下の項目には残業代を除外すると書かれてあります。(参照:Title 26: LABOR AND INDUSTRY Chapter 7: EMPLOYMENT PRACTICES Subchapter 3: MINIMUM WAGES)
The canning, processing, preserving, freezing, drying, marketing, storing, packing for shipment or distribution of:
(1) Agricultural produce;
(2) Meat and fish products; and
(3) Perishable foods.
(訳:以下のものにかかる輸送または配達のための缶詰、加工、保存、冷凍、乾燥、取引、保管、梱包:
(1) 農産物
(2) 肉製品、魚製品及び
(3) 生もの)
条文にあるコンマと「or」が曲者です。オックスフォードコンマと言われるもので、オックスフォード大学出版局が採用した正書法から来ています。
法律が残業代を除外しているのは以下のどちらなのかが論点になりました。
- 「(輸送・配達のための)梱包」(packing for shipment or distribution)
- 「(輸送のための)梱包」と「配達」(packing for shipmentとdistribution)
原告はトラック運転手で会社に残業代を請求しました。彼らは配達は残業代を除外する対象ではないと主張しました。
結果、一審では残業代の支払いは認められませんでしたが、二審では法律が曖昧であったことが認められ、支払いが命じられました。
以下の判決文には29ページに渡って文法的な法解釈が述べられています。
https://cases.justia.com/federal/appellate-courts/ca1/16-1901/16-1901-2017-03-13.pdf?ts=1489437006
ワシントン・ポストの記事も大いに参考になりました。
余談
オックスフォードコンマの有名な例としては以下のようなものがあります。
- We invited strippers, JFK, and Stalin.
(私達はストリッパーたちとJFKとスターリンを招待した。) - We invited strippers, JFK and Stalin.
(私達はJFKとスターリンというストリッパーたちを招待した。)
1の文章では私達が招待したのは少なくとも4人で、ストリッパーとJFK、スターリンはそれぞれ別人です。一方、2の文章では招待したのは2人です。JFKとスターリンという名前のストリッパーたちを招待したことになります。以下の文章も同様ですね。
- We invited the Rhinoceri, Washington, and Lincoln.
(私達はサイとワシントン、リンカーンを招待した。) - We invited the Rhinoceri, Washington and Lincoln.
(私達はワシントンとリンカーンという名のサイを招待した。)