辞書を読む

辞書を読んでいくストイックなブログです。

日本学士院賞の写真から

平成28年度の日本学士院賞は以下の人たちに授与された(敬称略)。

  • 森 和俊
  • 河内良弘
  • 宮本憲一
  • 西田栄介
  • 森田浩介
  • 井上博
  • 北川 進
  • 河岡義裕
  • 三品昌美
  • 松岡 信

日本学士院賞授賞の決定について | 日本学士院

巷でノーベル賞候補と話題なのは森和俊、北川進のお二人。分野的にそうだろう。113番目の元素を発見した森田浩介先生は滑り込み受賞な気がするけど、話題としても素晴らしいし演出としても心憎い。

それぞれの機関でのお写真の取り扱い方に特徴が出た。

日本学士院のホームページでは河内良弘、森和俊のお二人が写っている。

日本学士院第106回授賞式の挙行について | 日本学士院


一方、宮内庁のホームページでは森和俊、森田浩介のお二人が写っている。

ご臨席(日本学士院第106回授賞式)(日本学士院会館(台東区)) - 宮内庁


もう一つの茶会の記事、一枚目はよくわからないけど二枚目は宮本憲一、森和俊、松岡信のお三方とご一緒だ。

茶会(日本学士院賞本年度受賞者及び新会員等)(宮殿) - 宮内庁


森和俊先生が恩賜賞受賞なので写真に多く出るのは当然だとして、日本学士院が河内良弘先生を選んだのは面白い。


河内良弘先生は88歳で『滿洲語辞典』にて日本学士院賞を受賞した。

清帝国内では支配者の言語である満洲語が第一公用語として使用された。ただし、多民族国家であるため、漢語、モンゴル語満洲語に次ぐ公用語として併用された。(中略)清代に満文で記された公文書類(「清代満文案」Manchu-Language Archives of Qing Dynasty)(中略)が相次いで整理・公開されると、その価値と重要性についての認識が徐々に深まった。そして現在、研究者の間では、これらの、政治、経済、外交、軍事等、多岐にわたる二百万冊以上と推定される膨大な数の満文案の研究を抜きにしては、大清帝国の万全な研究は不可能であるという動かしがたい認識が共有されている。これらの貴重な満文史料を利用するには、当然、充実した満洲語の辞典が必要にして不可欠である。
従来、満文史料を読むための辞典としては、羽田亨(編)『滿和辭典』(京都帝國大學滿蒙調査會、一九三七年、復刻、国書刊行会、一九七二年)が使用されてきた。ただしこの辞典は用例を欠くほか、誤記、誤植が多く、また、案に見える満洲語の語彙などを収録していなかった。
(中略)
本辞典はそれら(既刊書)を大きく凌駕している。たとえば河内氏が、本辞典の海外における利用を予期して、本辞典所収のすべての満洲語語彙に清代に付けられた漢語訳を漏らさず付している点も注目すべきである。
(中略)
河内氏は本辞典の完成によって、文法、読本、辞典という、満文史料読解に不可欠のいわば三点セットをほとんど独力で完成するという偉業を達成したのである

大帝国だった満州の勉強がしたくて、文章を手に入らた。そしたら辞書がない。だから作った。文法書も作った。そしたら人生の時間が尽きた。という人生の人。4万語収録した辞書は500部、一千万円を私費から捻出して出版。公的な支援が得られなかったのだろうか。